ブックガイドを読んだり図書館で絵本選びをする中で、うっすら自分の深層心理の中で気になっていたことがあり。「絵本のジャンル狭すぎない?」具体的に言うと「物語に偏り過ぎじゃない?」ということでした。
というのも、私自身は普段あまりフィクションは読まず(まったく読まないわけではありませんが)、むしろそれ以外のすべての分野の本を読むことが多いからです。これは私が若い頃に読んだ成毛眞氏の「本は10冊同時に読め!」にて、ノンフィクションの価値を植え付けられたことに影響しています。
個人的に本は食べ物の栄養と同じように捉えていて、特定のジャンルに偏らず自分の興味の赴くままに摂取することで、知識や考え方などの内面の栄養バランスが取れるんじゃないかと思っています。なので、子供にも色んなジャンルの絵本を読んでほしいなと思っています。
でも私が知らなかっただけでした。世の中には物語以外の科学絵本も色々ありました。
「科学絵本の世界100」別冊太陽
この科学絵本ブックガイドは、大判のカラーで内容のページも紹介してくれているので絵本の内容が分かりやすくお勧めです。紹介作品数も多く質量ともに優秀です。
科学絵本は、物語絵本よりも選び方の難易度が高いです。物語絵本は適当に借りてきても読んでくれるケースはままありますが、科学絵本の場合は子供の気になるトピックにドンピシャ、かつ、イラストが先行する分かりやすい絵本でないと、どうしても子供がイメージしづらいのですぐ飽きてしまいます。しかも、やはり物語絵本に比べると作品数も少ないため図書館等で適当にピックアップするというのが難しく、こういったブックガイドで当たりをつけていくのがいいと思います。
「みんなうんち」五味太郎
最初の一冊はやはりこの絵本ではないでしょうか?うんちも立派なサイエンスです。我が子も例に漏れずうんち好きで、何を見るにつけ「これは◯◯のうんち?」としょっちゅう言っていました。
ブックガイドの「クレヨンハウス絵本town 読者のおすすめ絵本ガイド」でこの絵本についての五味太郎さんのインタビューが載っていました。動物学者に取材してうんちの面白さを表現したそうです。意外にも、この絵本は出版直後にバッシングを受けたこともあったとか。
まず「この本は子どもの本としては不充分」と文句をつけるひとたちがいた。「しつけ」がないし、うんちができるまでとか環境内の循環とかいう「科学」も描かれていないからと。ただの興味で描いたんだからそんなことを描く気はなかったし、そもそも「興味をもつ」ことがサイエンスの芽だなんてへりくつを言ってもいいしね
人間を含む色んな動物がうんちをして「いきものはたべるから みんなうんちをするんだね」で終わるシンプルな絵本なのですが、そこから先を敢えて描かないことでその後の興味の広がりを子供に委ねているそうです。
本というのは、その本で学ぶのではなくて知の素材のようなもの。それが個人のなかでどう変化していくかという意味では、食料みたいなものなんだよね。それを食べた個人がどう咀嚼していくか。たとえば『みんなうんち』を読んで、自然界のメカニズムに興味をもつ子もいるだろうし、動物に興味をもつ、あるいはことばに興味をもつ子もいるかもしれない。つまりこの手の本は「ぼくたちの生きている世界はなかなかいける、興味がつきないぞ」ということを提示できればいい。(中略)
幼いひとたちに「物事をこういうふうに見ましょう、考えましょう」といのは、言ってみれば洗脳だよね。(中略)幼いひとが「大好き」と言うものはそのまま受け止めていいよね。(中略)なぜこどもはうんちが好きかって?うんちにはそれだけの力があるからだよ。
サイエンスの世界への興味の種まきとして「みんなうんち」はうってつけではないでしょうか。
「はははのはなし」かこさとし
歯磨きも子供にとって身近なトピックです。なぜ歯磨きをするのか。虫歯になると体全体にどういう影響があるのか。栄養を取らないと歯にどういう悪影響があるのか。卵が先か鶏が先かみたいな話ですが、歯と体の相互作用が親しみやすく上手に描かれています。虫歯になった子の顔がムンクの「叫び」のようになっているのが面白いようで、我が子も「虫歯になったらこうなっちゃう?」とムンクの顔をよくしています。
「たべもののたび」かこさとし
食べ物がどんな過程で消化されうんちになるかという絵本です。食べ物たちは「栄養」というカバンを持って口から旅に出るのですが、途中の小腸という名の滑り台でそのカバンが放り出されで体に吸収されるというデフォルメ力がすごいなと思いました。食べ物の消化についての絵本は他にもいっぱいあるのですが、教科書をただ絵本にしたみたいな内容の絵本だと、特に幼児にとっては退屈で食いつきが悪いようです。科学的な正確さを保ちながら幼児にも分かりやすいようにデフォルメする、そのバランス感覚がさすがです。
「かこさとし科学絵本の世界」藤嶋昭
かこさとしは東京大学工学部を卒業後に昭和電工株式会社研究所で勤務していたガチの科学者(工学博士)だったようです。テーマによっては完成させるのに何年も調査を続けた作品もあったとのこと。正確さへのこだわりがすごいです。私は彼の作品のデフォルメ力の素晴らしさに感嘆しましたが、やはり本質を正しく捉えていないと効果的なデフォルメはできないので、裏には本質の正確な姿を追求する姿勢があったんだなと分かりました。
前段で紹介した2冊を含む様々な絵本が紹介されていて、2−3歳だと難しい絵本も多いのですがもう少し大きくなったときにたくさん読ませたいと思います。
「ちのはなし」堀内誠一
こどもが怪我したときに、「血が出たねぇ」「血ってなんだろうね?」という流れで読みました。体中に「血管」という血の道があって、それが破れると血が出るんだよということを話しました。私の手に透けて見える静脈を指さして「これも血管?」と話していました。
「恐竜トリケラトプスジュラ紀にいく」黒川みつひろ
我が子は恐竜が好きでこの本をよく読んでいました。ステゴサウルスが迷子になりお母さんを探しにいく話です。「おかあさんいないよ〜ってエンエンしてる?(泣いてる?)」と迷子のステゴサウルスにシンパシーを抱いていたようです。話が分かりやすいので子供はよくおかわりしていました。
「ほね」堀内誠一
恐竜が好きだと言うので博物館に恐竜の化石を見に行ったのですがそれがとても怖かったようです。その後「死んだら骨になる?」と興味を持ち出したので、この本を読んであげました。表紙のポーズがお気に入りのようで真似をしていました。
「だれのほね?」たけうちちひろ
前段で紹介した「ほね」(堀内誠一)は関節や筋肉など体を動かす仕組みについて描かれており大人も勉強になるような教科書的な雰囲気ですが、こちらの本はもっと簡単で色んな動物の姿と骨が交互に出てくるシンプルな内容です。とっつきやすいので食いつきは良かったですがすぐに飽きたので、年齢に応じて使い分けるのもいいかもしれません。
「りんごだんだん」小川忠博
りんごがだんだん腐っていき、虫が湧き、最後は灰のようになったもののなかで蛾のようなものが生まれる絵本です。写真主体なので分かりやすく、親子で会話しやすいです。蓋を開けて放置されていたレトルトご飯が腐敗していて、私が「うわー、腐っちゃったよ」と騒いでいたのを不思議そうに見ていたのでそれをきっかけにこの本を読みました。
「かぞえてみよう」安野光雅
巨匠、安野光雅の絵本。ボストングローブ・ホーンブック賞、ニューヨーク科学アカデミー児童科学図書優良賞、講談社出版文化賞と錚々たる賞を受けている作品です。文章はなく、ある1つの村の絵で1〜12の数字を表現しています(1のページでは家が一つ、窓も一つ、川も一つ、2のページでは家が二つ、窓も二つ...というように)。アイデアもすごいし絵も美しいです。
数字の概念を覚えてほしいなあと思って読んでみましたが、2歳時点ではまだ早かったのか我が子はあまり興味を示していませんでした。
(4〜5歳から?)政治・経済・社会の仕組みについての絵本
以下は科学ともまた違うのですが、社会の仕組みを知るために読んでほしいなぁと思っている絵本です。政治・経済って、子供のうちはあまり学校で詳しく習わない気がします(今は違うのかな?)。でも子供のうちから知っておいて、家族で会話したいなぁと思っています。2〜3歳だと早いのかもしれませんが、子供が理解できる歳になったら一緒に読みたいです。
「こどものとうひょう おとなのせんきょ」かこさとし
「科学絵本の世界100」(別冊太陽)で紹介されており、面白そうでした。民主主義の問題点なんかにも切り込んでいる作品のようです。
「買物絵本」五味太郎
こちらも「科学絵本の世界100」(別冊太陽)より。漢字も入っているし少し大人向け?なようなので、大きくならないと分からないかもしれません。何に対してお金を払うのかとか、買ったものに付随する副作用、副効用、物以外の経験などに対する価値について描かれているようです。上記の五味太郎氏のインタビューによると作品内であまり説明しすぎない、読者が考える素材を提供することを大切にしているようなので、きっと読者に「買い物ってなんだろう?」と考えさせるような内容なのかなぁ。と楽しみにしています。
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